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2017年12月29日

アレイダ・ゲバラさんの講演の紹介

「第19回世界青年学生祭典」の最終日である2017年10月21日(土)午前中に行われたアレイダ・ゲバラさんによる講演の内容です。アレイダさんはエルネスト・チェ・ゲバラさんの娘さんです。長いですが全文を紹介します。
(スペイン語からの翻訳は杉田洋子さん、文責は平和友好祭事務局)

親愛なる友人のみなさん、2017年はゲバラの没後50年を記念して様々なイベントが世界各地で催されました。この第19回世界青年学生祭典は、それらの中でも最も美しいイベントだと言えるでしょう。なぜなら、チェは青年のために働き、青年のために生きたからです。
この祭典に集まった若者は、私たちにとって大きな刺激となっています。キューバの国民的英雄ホセ・マルティは言いました。「他の人に徳を見出せる者は自らも徳を宿している」と。もしあなたたち青年がチェの中に徳を見出せるなら、その徳はみなさん一人ひとりに伝播したということです。今日、私たちはチェの思想の切迫した必要性を感じています。ですから今日は私からみなさんにチェの言葉を伝えます。
チェは言いました。「いったいいつまで種や血統にもとづいた愚かな秩序が続くのか、それは私には分からない。為政者は自らの政権の善良さを宣伝することに時間を費やすのを止めて、社会に役立つ公共事業にもっと多額の資金を投じるべきだ」。
「私は学生として旅をするなかで、貧困や飢餓、病と身近に接する機会を得た。おカネがなく子どもの治療もできないやるせなさに触れた。飢餓や絶え間ない責め苦は感覚を鈍らせ、親が子どもを失うことなど何でもないことのようにさえ思わせる。これは、私たちの祖国であるアメリカ大陸の虐げられた階級ではたびたび起きていることなのだ」。
残念ながら同様の状況は、今なお世界各地で続いています。私は光栄にもキューバの医師として、アンゴラの人々のために働く機会を得ました。そのとき、すでに亡くなった子どもを病院へ運んできた父親がいました。彼らにとっては、それは起こり得る、当たり前のことでした。とても理解しがたいことですが、私たちはこのような事態とたたかい続けなくてはなりません。肌の色や生まれた場所に関わらず、全ての子どもたちが、身分の低い暮らしをしているからという理由で苦しむことのないように。
チェは見たものや感じたことを書き綴りました。私たちはそこに、彼の人間としての、革命家としての成長を見て取ることができます。チェはメキシコでフィデルやラウルと出会い、キューバの独立のためにたたかい、立派なゲリラ兵士になりました。そして革命の指導者となり、自ら模範を示すことで人々を導きました。
チェはこう言いました。「我々には前進し、自ら模範を示す人間が必要である。継続はときに困難でもあるが、未踏の地を進むよう他人に促すことよりはるかに易しい」。
これについて考えてみましょう。民衆を自分たちの下に集めたいなら、私たちの目標と目的を示さなくてはなりません。最も重要なのは、民衆が非の打ちどころのない倫理観を私たちに見出し、私たちの言動に信頼を感じることです。チェは、多くの人をともに歩ませることに成功しました。チェの言葉を聞いた人々は彼を愛し、我が子のように慕いました。チェは疲れ知らずで働き、多忙を極めながらも次世代の育成に心を砕き、若者との対話を続けました。人間としての本質を追求し、最高の人間であろうとしました。仕事や学業、そしてキューバ国民のみならず世界中の民衆との連帯を実践し、最も洗練した人物になろうとしました。感受性を磨き、世界の片隅で誰かが殺されれば苦痛を抱き、世界のどこかで自由の旗を掲げる人が現れればともに夢中になりました。
青年と学生が集うこの祭典は、世界の隅々の情報、地球の様々な場所で何が起きているかをより多く知る機会を与えてくれます。必要な情報がないがゆえに、行動を起こせないことも少なくありません。一方で、たとえ情報があったとしても、苦しむ人々の立場に立てず、行動を起こせないことがあります。私たちはこの状況を打開しなくてはなりません。
帝国主義の支配する世界では絶えず、とりわけ近年は、尋常ではない数の人命が失われています。これは決して正当化できない様々な戦争の結果です。シリアの国民に起きている事態を正当化することは決してできません。パレスチナの民が生きている現実を正当化することはできません。西サハラの人々が自国の領土で暮らせないことを正当化することはできません。プエルトリコが今なお合衆国の植民地であることも、ベネズエラで起きていることも、正当化することはできません。土地の権利を守るためにたたかうアルゼンチンの先住民が残酷に殺されることなど、決して正当化することはできません。
私たちは他者の痛みを己の内に感じ、反応しなくてはなりません。この星にはたくさんの男女がいて、この現実を変革するだけの力を持っていますが、それを実現するにはたたかいが必要です。

革命家は大きな愛によって導かれています。この資質がなければ真の革命家とは言えません。たとえ自らの生命を危険にさらしても、私たちの最も善なる部分を、公正な目的のために捧げるには欠かせない資質です。自己保身のために勝利を願うのではなく、思い切って死か勝利かを遂げるまで道をともにすることです。連帯と民衆への敬意は、革命家を異国の地へといざないます。
チェは言っていました。「世界から搾取されている私たちに求められる役割とは何か?」「3つの大陸の民は、ベトナムで起きたことから教訓を得ている。戦争の脅威によって帝国主義者たちが人類を脅かすのであれば、それに対する正当な答えはたたかいを恐れないことである」。
それこそまさしく今日も、帝国主義が続けていることです。主権と独立をかけた民衆のたたかいを、力で抑圧しようとしているのです。
私は2つの悲しい戦争を経験しました。一つはニカラグアにおいて、もう一つはアンゴラにおいてです。戦争は、人類がこの世で経験し得る最もつらく過酷なものです。それでも受け入れなくてはなりません。飢えや貧困による屈辱の下で死ぬのか、あるいは現状を変えようとして生命を落とすのか。そこに選択の余地はありません。
「もうひとつのキューバを作ることを許すな、というスローガンのもと、米国は安全地帯からの攻撃の可能性を留保している。ドミニカ占領(※1)やそれに先立つパナマでの虐殺(※2)が好例だ。これは米国の権利を脅かすような政変が起きたラテンアメリカのいかなる国にも、米軍は介入する用意があるという明らかな警告である」。
チェが1966年に懸念していたことが、現実にベネズエラで起きています。ベネズエラは米国の利権を危険にさらしました。以前、米国は1バレル5~7ドルというただ同然の価格でベネズエラの石油を入手していましたが、今は1バレル40~60バレルという国際市場価格で購入しなくてはなりません。米国は世界最大の石油消費国です。この変化が米国経済にどれほど深刻な影響を及ぼすかは明らかです。ベネズエラが犯したたった一つの“罪”は、自国の天然資源を初めて自ら所有したということだけなのです。米国政府にとってこれは、断じて許しがたい罪です。ですからあらゆるメディアを駆使してボリバル革命を潰そうとしています。私たちはこのことからまなばなくてはなりません。行間を読み取ることをまなばなくてはならないのです。
アルゼンチンの有名な漫画「マファルダ」(※3)の教えを思い出してください。マファルダはスープが嫌いなのに、無理矢理飲まされそうになります。すると彼女はこう言います。「もしフィデルがスープはおいしいと言ったら、誰も私にスープを飲ませようとしないのに」(※4)。
これは今起きていることにも当てはまります。もしマスメディアが革命や民衆について悪く書き立てているなら、私たちはこう考えるべきです。その革命や民衆は、素晴らしいことを成し遂げているのだと。
「この政策が処罰を受けることは皆無に等しい。米州機構という都合の良い仮面があるからだ。たとえ評判が損なわれてもだ。国連は滑稽ともあるいは悲劇的とも言えるほど能率が悪い。ラテンアメリカの国々の軍隊は、自国の国民を叩き潰そうとしている。犯罪と裏切りの国際組織が形成されたのだ」。
幸いにも、ラテンアメリカでは変化が起きました。恐らくボリバル革命は新自由主義に対する最善の返答だったしょう。だからこそ、私たちがボリバル革命を維持し、完成させ、保護し、支持することが重要です。そして常に、米国の介入を拒否することです。米国のいかなる軍隊にも、兄弟である国々の主権を傷つけさせてはなりません。
何年も前、アンゴラの民衆がキューバに支援を求めました。何千キロメートルもの距離があるにも関わらず、のべ1500万人のキューバ人がアンゴラ人民の支援に駆けつけました。世界に対する強い愛と、愛することを知る国民の力のなせる業です。ベネズエラとキューバの地理的な関係を考慮すれば、米国政府がベネズエラの領土を攻撃したいなら、よくよく考えた方が身のためでしょう。
チェはとても急進的だと言われました。「起こすべき変化は一つ。社会主義革命でなければ、それは革命のまねごとにすぎない」「ラテンアメリカ諸国は共通する言語や習慣、共通する宗教、共通する主人によって結ばれている。ラテンアメリカの大部分における搾取の程度や形態はその効果において、搾取する側にとってもされる側にとっても似通っている。反乱の機は熟しつつある」。
幸い私たちはチェに“イエス”と言うことができます。反乱の機は熟した、ラテンアメリカの多くの民衆が前に向かって進み始めたと。ボリビアにはエボ・モラレスがいます。その重要性が分かるでしょうか? おかげで、世界で最も貧しかった国のひとつが、繁栄への道を歩み始めたのです。重要なのは“できる”と信じることです。民衆が力を合わせれば、現状を変えることができるのだと。
私たちは搾取され、世界から取り残された民衆として、帝国主義の支持者を排除するたたかいに参加するべきです。抑圧されたラテンアメリカの民は、資本や資源、低賃金の技術者や労働者を吸い上げられる一方、新たな資本の輸出先となっています。それらは武器やあらゆる商品といった支配の道具であり、私たちを完全な依存状態に追い込みます。
チェの考えはラテンアメリカ大陸の垣根を越えました。彼は言いました。「中東は沸点に達している。帝国主義の後ろ盾を得たイスラエルと周辺の進歩主義国家との冷戦が、いったいどこに達するか予測できないまま。それは世界を脅かす火山の一つである」。
まさに中東は噴火寸前の火山です。みなさん、私たちはいつまでこの状況に耐えなくてはならないのでしょうか? いったいいつまで、ヨーロッパ諸国の政府がこうした戦争を引き起こすテロリストを支え続けることを許すのでしょうか? いったいいつまでイスラエル政府がパレスチナの民を虐殺することに耐え続けるのでしょうか? いったいいつまで?
世界中の若者が、自らの力を自覚しなくてはなりません。彼らは若く、新鮮な感覚を持ち、人生のためにたたかう意志を持っています。今こそ力を結集し、偉大な先人たちが追った夢を実現するときです。
「未来を予言することはできない。だが決して、自由を夢見ながらそのための闘争を拒み、勝利を待つだけの愚民の旗手になってはいけない」。
空を仰ぎ見ても、落ちてくるのは雨や雪や雹、ときにはサイクロンだけで、より良い未来を築く助けになるものは何も落ちてきません。ですから私たちは常にたたかいに備えなくてはならないのです。
「我々の勝利への願望を統一しよう。帝国主義を破壊する手段は、その最も強力な後ろ盾であるアメリカ合衆国の帝国主義支配を排除することである。一人ひとり、あるいはグループごとに、戦略をもって少しずつ民衆の自由をつかむのだ。彼らを敵地での厳しい戦いに追い込み、その足掛かりとなる海外領土を一掃することによって」。
当時、チェは第2、第3の、たくさんのベトナムを作ろうと提案しました。私たちにそれを実現することはできませんでしたが、他でもない米国政府が今、それを実現しつつあります。考えてください。朝鮮、イラク、イラン、アフガニスタン、ベネズエラ、キューバ…、世界にはたくさんの国があります。そして帝国主義はどれだけ強大であっても、全てを同じように独占することはできません。今こそ、私たちが声をあげ、力を発揮して、この世界の変革に乗り出すときかも知れません。チェはこう言っています。
「より堅固で的確な打撃を与えるために、そして闘争中の民衆へのあらゆる援助をより効果的なものにするために、私たちみんなが団結することができるなら、未来はいかに大きく、近いものになるだろうか!」。
チェは私たちに、最も優れた人間になるための模範を示しました。みなさん、団結は現実を変える力を得るために、なくてはならないものです。

キューバ国民は世界の他の国の人々と何ら変わりません。愛し、苦しむことを知る、同じ人間です。ただし、キューバ国民には強い抵抗心があります。キューバ国民は、世界で最も強大な帝国からたった90マイルの距離で社会主義革命をどう起こすか、米国の侵攻がキューバ国民をどのように奮起させたか、団結がどれほど強い力を国民にもたらすか、重要な事例を示しました。
「団結した民衆は二度と負けない」と言う言葉は、次のように言い換えることができます。「武装した民衆は二度と打ち負かされない」。みんなが人生を守るプロフェッショナルになるべきです。ここにいる一介のキューバ人小児科医(※アレイダ自身のこと。訳者注)も銃の撃ち方をよく心得ています。
チェは言いました。「この世界の片隅で、キューバ革命からまなんだことと、その最高指導者の姿勢からにじみ出る教訓とを誇りに思う。人類の命運がかかっているときに、一人の人間、一人の国民の危険や犠牲が、どれほどの意味を持つというのだ」。
今日、キューバの若者は、この教えを実践しています。私はそれを誇りに思います。人類にとって非常に恐ろしく危険な感染症、エボラ出血熱が、すばらしい国民の力によって食い止められました。世界保健機構は、米国やフランスやカナダではなく、キューバに助けを求め、協力を得ました。キューバ国民が、自らの生命を顧みず、エボラ出血熱の感染拡大にブレーキをかけたのです。
私たちの行動は全て、帝国主義に対する新たなたたかいの雄叫びであり、人類の大敵である米国に立ち向かうための団結を呼びかける声です。
「どこであろうと喜んで死を受け入れよう。私たちのたたかいの雄叫びが、理解ある誰かの耳に届き、誰かがその手に武器を取り、銃声の哀しい調べを歌い、新たなたたかいと勝利の雄叫びをあげる限り」。
みなさん、このたたかいと勝利の雄叫びを奪われてはなりません。前進しましょう。私たちにはできるはずです。チェがキューバ国民に別れを告げたときに言ったように。
「たたかいつづけよう。勝利の日まで、常に」。
(杉田洋子訳、文責は編集部)

(※1)1965年4月下旬にドミニカ共和国で一部軍人が主導、左翼勢力が加担した革命が勃発。この革命は首都サントドミンゴに局限されたが、米国政府が米軍を大量に上陸させたため、米国政府と米州機構および国連との複雑な関係が生じ、結局米州軍が駐留する形となった。
(※2)1964年、パナマ人学生が、米軍占領下のパナマ運河地帯に入り、パナマ国旗を掲げた。米軍は銃撃で応じ、学生23人が死亡、負傷者も出た。
(※3)6歳の少女マファルダが主人公の風刺漫画。
(※4)フィデルが良いと言ったものは、まわりの大人たちが悪いものだとみなして禁止してくれるのに、という皮肉。

アレイダ・ゲバラさんの講演の紹介
世界中からソチ祭典に集った青年たちに語りかけるアレイダさん


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