兵庫県議会による「齋藤元彦兵庫県知事に対する不信任決議」そのほか

平和友好祭

2024年11月16日 23:01

11月17日に投開票が行われる兵庫県知事選挙にあたり、SNS上でデマや誹謗中傷が飛び交っています。事務局ももと兵庫県民として無関心ではいられません。兵庫県の仲間から連絡があり、大学時代の友人たち、神戸市内の親戚に投票に向けた声かけを行いました。


こうしてみると、頭の中に入っている兵庫県の地図と、実際の市町村の位置や範囲がずいぶん違うのだなと気づかされます。

今回の県知事選挙に関し、まずは以下に今年9月19日付で兵庫県議会が全会一致で可決した「齋藤元彦知事に対する不信任決議」を以下に紹介したいと思います。

決議案 第3号
齋藤元彦兵庫県知事に対する不信任決議

 元県民局長が齋藤知事はじめ県幹部に向けた告発文書を巡る一連の問題が惹起されてから、約半年が経過した。県政は混乱を極め、156年の歴史を誇る我が雄県兵庫は危機的状況に直面している。
 まず、文書問題調査特別委員会の調査の中で、告発文書の内容に真実が存在し、文書が「嘘八百」ではなく、告発者への対応が告発者探しや情報漏洩の疑いを指摘されるなど不適切と言わざるを得ないことが明らかになったにもかかわらず、知事は「真実相当性がない」、「誹謗中傷性が高い」として県の対応は適切であったとしているが、専門家は交易通報者保護法の見地から「兵庫県は今も違法状態」と断じている。現時点で詳細な要因は明らかではないが、元県民局長の命を守れなかったという厳然たる事実は大変重く、責任は大きい。
 次に、日本国憲法に則り県民の生命と財産を守ることを使命とする行政の長たる知事の職責を果たすためには、県民・県職員の模範として、法令遵守は当然のことながら、人として守るべき倫理・道徳や人権感覚に基づく道義的責任がより強く求められるが、「道義的責任が何かわからない」との知事の発言から、その資質を欠いていると言わざるを得ない。
 そして、告発文書への初動やその後において、対応が不適切、不十分であったことにより、県民の信頼を損ない、県職員を動揺させ、議会を巻き込み、県政に長期に渡る深刻な停滞と混乱をもたらしたことに対する政治的責任は免れない。本県及び県民の誇りを失墜させてしまった今、県民及び県職員からの信頼回復は到底見込めず、県政改革を着実に進めなければならないこの大変重要な局面において、齋藤県政がそれに応えることは困難な状況である。
 ここまで申し述べたとおり、齋藤知事の責任は重大である。これ以上の県政と職員が安心して働ける職場を一日も早く取り戻し、来年度予算は新たに県民の信任を得た知事の下で編成されるべきである。
 よって、本県議会は、齋藤元彦兵庫県知事を信任しない。
以上、決議する。

以上が9月19日の不信任決議案の紹介になります。



これに先立ち、7月10日には兵庫県職員労働組合が「告発した職員を守ることができなかったのは痛恨の極み」「現場の業務遂行に大きな支障が生じている」として知事に辞職を含めた最大限の責任を取ることを訴える申し入れ書を提出しています。この報道を受けて、県職労書記局には県民や県職員から激励が続々と寄せられたそうです。昨年の夏は、西武池袋デパートでのストライキが大きな注目を浴びました。今年の夏は、兵庫県職労が厳しい実態の下で働く労働者の気持ちを象徴する存在になったのだと思います。

兵庫県内で平和友好祭運動に取り組んでいた先輩たちが多く活動している新社会党兵庫県本部からも、7月16日付で以下の声明が発表されていました。経過が分かりやすくまとめられているので、参考としてこちらも紹介します。

 今年3月中旬、当時の西播磨県民局長が、齋藤元彦知事や県幹部らのパワハラや違法行為など7項目にわたって内部告発した問題は、その疑惑の調査のために県議会によって設置された百条委員会で承認として出席する予定だった当の元西播磨県民局長が7月7日、委員会を前に自死するというきわめて遺憾で悲しむべき事態となりました。
 元県民局長の告発文書は、齋藤知事が、職権で自らの選挙運動への幹部職員の違法な動員、特定企業や業界との癒着、異常な金品の請求、度を越した職員への叱責・恫喝・罵声などを行ったことを指摘したもので、事実であれば知事としての資質が当然厳しく問われるような内容でした。この内部告発文書をめぐるこの間の一連の経過を振り返れば、今日の異常な事態に立ち至った責任は、齋藤知事自身の責任に帰するところ大と言わねばなりません。
 齋藤知事は、内部告発文書が明らかになるや、客観性を担保できない県内部の調査だけをもとに、記者会見では「うそ八百を並べ立て…」などと断じて文書の内容を否定し、県人事課は元県民局長を解任、3月末での退職も認めないという一方的な処分を下しました。
 4月になり、元県民局長が文書内容の一部を県の公益通報制度にもとづいて公益通報しましたが、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止を定めた公益通報保護法に反するようなかたちで、県は5月7日、元県民局長が停職3か月の懲戒処分を行いました。
 この間、県議会での質疑で告発内容の一部が真実であることが明らかになっていたにもかかわらず、また、齋藤知事自身が再調査のための第三者機関の設置を表明しながらもその調査を待つこともなく、「調査の前に処分ありき」の処分断行でした。これだけの経緯からも知事の対応には妥当性がなく、きわめて高圧的なものだと言わねばなりません。
 この問題をめぐっては、その後、県議会によって疑惑の真偽を調査する百条委員会まで設置されるという事態に進みましたが、元県民局長の死亡という痛恨の事態に至るなかで、7月10日には県の職員労働組合が「もはや県民の信頼回復が望めない状況」だとして齋藤知事に「最大限の責任」を取ることを求める申し入れを行いました。
 そして、7月12日には齋藤知事の最側近と言われていた片山副知事が「県政混乱の責任を取って」と辞職届を提出するとともに、同副知事から齋藤知事に対して5度も辞職を進言したが断られたという事実も明らかにされました。
 いま、県政は混乱の極みにあり、齋藤知事と職員との間に不信感が広がっているばかりか、県民の間にも齋藤知事の責任を問う声が広がっています。
 齋藤知事自身は、これまで十分な謝罪の言葉もなく、任期を全うすると強弁していますが、県政の混乱の収拾のためにも、今日の事態と自らの責任を重く受け止め、即刻、責任を取って辞職することを私たちは強く求めるものです。
新社会党兵庫県本部 新社会党近畿ブロック協議会

以上で引用を終わります。県知事選挙に関して伝えられている深刻な混乱について考えたことのうちいくつか以下に記します。

①上で紹介した決議や声明で説明されている経緯と経過をまったく無視した情報がとりわけSNSを通じて垂れ流されています。こうした情報は多くの場合は真偽が巧みに、あるいは乱雑に織り交ぜられ、有権者をかく乱させる機能を果たしていることが特徴です。沖縄の基地問題をめぐっても同様の手法が常套手段となっています。労働組合における学習の機会の減少は、SNSを通じたデマゴギーが労働者や青年の間に浸透する余地をますます広げています。それは、真偽を織り交ぜた情報どころか、あからさまなデマ、ウソ、誹謗中傷を容易に信じる人々を生み出しています。しばしば指摘される商業マスコミの劣化・退化もその条件の一つとなっているようです。

②兵庫県明石市、広島県安芸高田市、そして今回の兵庫県と、独断・独善とパワハラが問題にされた首長に、とりわけ青年層の支持が集まっている(と言われる)のはなぜか。それは、かつての「革新」やその系譜をひく各政党、労働組合、そして「リベラル」が若い世代の支持や関心を集められていないのはなぜなのか、という命題とも一致しています。無自覚のまま無意識に保守化したかつての「革新」は、今のままでは若い世代の不満や不安の代弁者にはなり得ません。そして、平和・人権・環境をめぐる諸課題は、少なくない人々に「一部のリベラル」の理念遊び、言葉遊びのように受け止められ、生活や労働をめぐる困難の解決、改善と結びついていない状況があるのではないでしょうか。これは、「立憲野党」が総選挙で「手取りを増やす」と言えなかったのはなぜか、という言い替えができるかも知れません。

もちろん上記以外に私たちが反省、総括すべきことは多くあります。どの候補が当選するにしても、選挙の後にやらなければならないことは同じです。

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