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2020年04月09日

パンデミック下のイタリアからの報告

「新型コロナウイルス」が世界中の青年たちの生活に重大な影響を与えています。報道によれば、4月4日の時点で世界各地で感染が判明したのは約118万人、死者は8千人を超しています。日本では「自粛」ムードが蔓延していますが、ヨーロッパでもっとも大きな影響を受けたイタリアでなお青年たちのために活動を続ける共産主義青年団のヴィンセンゾ・コラプリス国際部長から3月28日に届いた報告を紹介します。(原文は英語)

公的医療制度の後退が感染拡大の背景に
イタリアはヨーロッパで初めて「新型コロナウイルス」による深刻な影響を受けた国となりました。3月27日時点で8万0439人の感染が判明し、うち1万0361人が回復し、一方で8215人が死亡しています。少し前までは中国と米国がもっとも感染者の多い国でしたが、今はイタリアがとって替わっています。
現状は悲劇的で、北イタリアを中心に毎日500人の市民が死亡しています。事態の収束後にはすべてが変わり果てているでしょう。イタリアがなぜヨーロッパで最初にコロナウイルスの強い影響を受け、かくも多くの死者を出しているかについて、私たちは正確な原因をみなさんに示すことができます。
この10年間、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ギリシャは、医療制度の合理化に代表される緊縮策をEUに課せられました。イタリアには労働者のたたかいによって1978年に勝ち取られた、全住民に適用される国民健康保険制度があります。すべての市民は「チケット」と呼ばれる収入に応じた少額の税金を支払い、さまざまな医療サービスを受けます。90年代に医療の民営化が進められ、「チケット」の費用が上昇を始めました。病院運営に利潤追求が求められるようになり、国民健康保険制度の後退と、主にカトリック教会が経営する民間病院への助成が行われました。2000年代には国民健康保険制度が20ある州ごとに分割されました。制度そのものは政府の管理下に残されましたが、独立採算制の導入と公的支出の削減のために中小自治体の公立病院の多くが閉鎖に追い込まれました。新しい公立病院も費用面の問題から10~20の自治体が合同しなければ建設できない状況でした。
この10年で政府は国民健康保険の予算を370憶ユーロも減額しました。病院の新規建設や医療労働者の新規雇用を凍結しました。WTOによれば、現在のイタリアにおける人口10万人に対する病床数は272床です。これは1980年代には1000床を超えていました。いまやイタリアの国民健康保険制度はヨーロッパでもっとも「効率的」だと言われています。

新型コロナウイルスの爆発的感染と政府の過ち
イタリア国内で初の感染の判明は1月31日で、中国人の夫婦でした。この日、政府はウイルスの潜在的感染者の入国を阻むために、イタリア-中国間の全航空便の運航中止を決定しました。しかし、これは致命的なミスでした。多くのイタリア企業が、とりわけ服飾産業や繊維産業の分野で中国企業や中国人ビジネスマンと一緒に働いています。たくさんのイタリアの技術者や労働者が技術やビジネス上のノウハウを指導するために中国との間を頻繁に行き来しています。イタリア-中国間の直行便の運航が停止されることで、中国から第3国を経由して入国・帰国する感染者を空港当局が捕捉することが不可能になりました。今回のコロナウイルスによってイタリアでもっとも深刻な影響を受けているロンバルディア州のベルガモ県には、中国と取り引きや共同事業を行っている会社が多くあります。
イタリアの政府と企業の不適当な対策により、中国からの帰国者・入国者による北イタリアでのウイルス拡散を阻むことができなくなりました。2月中旬から少しずつ報告されるようになった感染者は、2~3週間後に急増し、2月29日には総計1128人にのぼりました。
北イタリアのミラノとパドゥア近郊で感染者のクラスターが発生し、これらの都市は封鎖されました。2月22日にはロンバルディア州とヴェネ州週が封鎖されました。日用品の工場が稼働を続けているにも関わらず、スーパーマーケットに不安にかられた多数の市民が押し寄せました。封鎖措置は、北イタリアでもっとも人口が多く豊かな地域にいた労働者や学生が南イタリアの家族・親族のもとに避難する原因を作りました。この大規模な移動は、政府がロックダウンを指示する数時間前に複数の新聞のリークをきっかけに発生しました。これがもう一つの間違いでした。ウイルスが拡散され、3月4日には政府が全国の学校と大学の閉鎖を宣言しました。9日にはイタリア全土が危険地域に指定され、各州の間の封鎖が4月3日まで延長されました。
緊急事態を利用して政府の権限が徐々に強化されています。ジュゼッペ・コンテ首相の支持率が上昇し、75パーセントにも達しました。イタリア国旗が市内の建物のバルコニーに飾られたのは、ブラジルやスペインのように政府への抗議のためではありません。ついには、起きている事態が戦争に例えられるようになりました。しかし、いくら勇ましい軍事用語を使ってみても、未経験の緊急事態の打開には何の役にも立ちませんでした。
感染爆発を受けて、有名サッカー選手や各界の要人が公立病院への多額の寄付を開始する一方で、億万長者たちがイタリアから避難しました。多額の寄付はウイルスに感染していても症状がないままの人々の検査に少しばかりは役立ちました。しかし、国会では、保守勢力が緊急事態終了後に新たな緊縮財政を求める欧州中央銀行のマリオ・ドラギ前総裁の提言を受け入れるよう政府に求めています。

失業や教育困難に直面する労働者・学生
短期間の休校ののち、学校や大学がZOOMやグーグル社の提供するサービスを通じて再開されましたが、休校によって失われた授業時間を取り戻そうとする試みは中高生に強いストレスを強いています。不十分なハードウェアや貧弱なインターネット環境、あるいは精神の不安定といった問題に直面している学生もいます。インターネットのプロバイダや携帯電話会社は緊急事態終了までは接続に制限を設けないことを決定しましたが、これでは不十分です。学生自治会連合において、私たちはインターネット接続が困難な学生や家庭に資金援助する公的基金の創設を訴えました。これに応じて政府は250憶ユーロの投入を決定しましたが、それを実施する手だてがありません。精神面の問題に関しては社会的ネットワークを通じた支援に取り組んでいます。
大学生も同様の問題に直面しているものの、中高生ほどは緊張の度合いは強くありません。アルバイトを続けるのは困難でも、講義や議論はストリーミングソフトを通じて行われています。公務員は在宅勤務を行っており、民間企業でも条件が許すところでは同様です。しかし、工場労働者は大混雑した公共交通手段で健康のリスクを冒しながら職場までの通勤を余儀なくされています。
イタリア共産主義青年団は、緊急事態が収束するまでの企業活動の停止にともなう労働者や失業者を対象として、緊急避難的なベーシックインカム制度の実施を訴えています。さらに私たちは、労働者をウイルス感染から保護する施策が行われていない問題の解決を訴えるストライキをいくつかの職場で構えました。ベルガモ県の工場で労働者がウイルスに感染して死亡する事態が発生したからです。労働運動のナショナルセンターであるイタリア労働総同盟、イタリア労働組合連盟、イタリア労働同盟が労働者の解雇措置をともなう不要不急の産業部門の閉鎖について政府と交渉するなかで、3月25日には全国的なストライキが呼びかけられました。
資本家たちの団体であるイタリア産業総連盟は、政府に閉鎖される企業や産業の見直しを求めました。ジュゼッペ・コンテ首相は防衛産業やコールセンターといったパンデミックの克服に必要ではないはずの産業の閉鎖を見直す約束をしました。

キューバからの支援に大きな希望が
医療は崩壊寸前です。緊急病床の不足は、誰を救い誰を見捨てるかという残酷な選択を医師に強いています。とくに高齢者がコロナウイルスに重大な影響を受けており、高齢の患者の大部分が死に至っています。このため、医師が高齢者を放置して若者の治療にあたりたがる傾向を生み出しています。病院内も安全ではなく、多くの医師がコロナウイルスに感染し、36人が生命を落としました。看護師として働いている母を通じてウイルスに感染した私たちの同志は、個人を保護する備えがない病院の現状を告発するビデオを拡散しています。
その後、中国とロシアが医療器具や支援物資をイタリアに送ってくれています。中国は医療チームも派遣しました。私たちが何よりみなさんに伝えたいのは、3月22日にキューバの医師団がミラノに到着したことです。キューバに対して数々の不公正な経済措置が行われているにも関わらず、52人の医師がイタリアで人々を助けるために奮闘を開始しています。

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Posted by 平和友好祭 at 14:02│Comments(0)政治問題国際連帯
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