2012年04月12日
PAC3部隊の展開について
『青年の声』4月16日付号の転載です。
沖縄への自衛隊展開~人工衛星打ち上げをめぐって(上)
民間や自治体との「連携」 脅威あおり大規模展開を正当化
朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星の打ち上げを発表して以来、日本政府や自衛隊は陸上自衛隊の迎撃ミサイル(PAC3=パトリオットミサイル)部隊やミサイル防衛の能力を持つイージス艦を沖縄や東シナ海方面に配備しています。また、市谷の防衛省本省、朝霞駐屯地、習志野演習場にもPAC3部隊が配備されています。
沖縄には那覇基地を中心に陸海空の自衛隊の基地がすでに置かれていますが、今回のPAC3部隊の展開に関連し、石垣島に450人、宮古島に200人、与那国島に50人、航空自衛隊那覇基地と知念分屯基地にそれぞれ100人の自衛隊員が配置されました。40年前の沖縄の「復帰」後、最大規模の自衛隊の展開となります。
石垣島では、PAC3は海上自衛隊の輸送艦「くにさき」や航空自衛隊のC130輸送機が運搬し、そのほかの陸自の車両は民間のチャーター船が輸送しました。さらに、民間地に実弾を装填した銃で武装した隊員がPAC3の警備として配備されています。市役所にも10人程度の人員を配置し、「連絡」役にあたらせています。PAC3の配備されない与那国島にも「破片が落下した際の救護に備える」として闘牛場に自衛隊員が配備されました。このほか、沖縄本島へのPAC3の運搬は名古屋港から民間船舶が使用されました。
自衛隊が、民間や自治体を巻き込んで「有事」に備える態勢をつくっていることが分かります。「復帰」40年である今年、自衛隊の意義や有用性を「脅威」を煽ることを通じて示そうとしていると言えます。昨年は東北の震災被災地での「活躍」が喧伝されてきた自衛隊は、沖縄では軍隊としての本質を示しています。
人工衛星の打ち上げ自体は国際法(宇宙条約)でいずれの国家にも認められた権利です。ですので、防衛省はPAC3の配備について、「北朝鮮の人工衛星打ち上げが失敗したときの落下物を撃墜する」としています。しかし、PAC3の有効射程は約20キロメートル程度であり、そもそも秒速4キロメートル以上で飛来するミサイルの迎撃が可能かどうかについても疑義が持たれています。
09年8月に韓国が初めて人工衛星を今回の朝鮮と同じように南に向けて発射しました。韓国のロケットはトラブルのために打ち上げが1カ月ほど遅れていました。ロケット自体は高度300キロメートルまで上昇したものの、人工衛星の軌道への投入は失敗しています。しかし、政府や自衛隊は「韓国の場合は宇宙の平和利用であることは明らかだ」として、今回のような迎撃態勢をとりませんでした。
朝鮮は今回の人工衛星の打ち上げにあたって、外国の政府、マスメディア、科学者に施設や打ち上げ後のロケットの飛行経路を公表しています。さらに、人工衛星のロケットと弾道ミサイルは技術的には同じだから、韓国は良くても朝鮮の人工衛星発射はダメという二重基準は国際社会に新たな不安定要因をもたらす原因となります。
結局、「北朝鮮のミサイル発射実験」をいかにも脅威のように煽り立て、これを利用してこの間も進められてきた沖縄方面への自衛隊の展開を進めようとする日本政府と自衛隊の姿勢が見て取れます。
以上、転載終わり。
沖縄タイムス(4月9日付)にも、2009年の朝鮮の「ミサイル発射」に対応した元内閣官房副長官補の見解が掲載されている。PAC3の展開について「展開の訓練と八重山諸島への配備に向けた地ならし」が目的とのことです。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-09_32253/
要するに、打ち上げられるのが人工衛星でもミサイルでも、軍事的対応としてはPAC3部隊の配備は意味がないと言えます。しかし、すでに修学旅行のキャンセルなど観光への影響が出ているようです。
朝鮮が打ち上げ施設の公開を進めるなかで、今朝あたりのマスコミは「事実上のミサイル」という言い方にシフトしていますが、物事をもっと冷静に見定める必要があるのではないでしょうか。

「くにさき」と同型の「おおすみ」LST4001。昨年9月海自呉基地沖にて。
ときどきその艦型から「空母だ!」という人もいますが、LST=LandingShipTankつまり戦車揚陸艦です。甲板上でヘリの発着・係留はできますが、整備能力はないので「空母」と呼ぶには苦しいかも知れません。固定翼機の発着能力はありません。
沖縄への自衛隊展開~人工衛星打ち上げをめぐって(上)
民間や自治体との「連携」 脅威あおり大規模展開を正当化
朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星の打ち上げを発表して以来、日本政府や自衛隊は陸上自衛隊の迎撃ミサイル(PAC3=パトリオットミサイル)部隊やミサイル防衛の能力を持つイージス艦を沖縄や東シナ海方面に配備しています。また、市谷の防衛省本省、朝霞駐屯地、習志野演習場にもPAC3部隊が配備されています。
沖縄には那覇基地を中心に陸海空の自衛隊の基地がすでに置かれていますが、今回のPAC3部隊の展開に関連し、石垣島に450人、宮古島に200人、与那国島に50人、航空自衛隊那覇基地と知念分屯基地にそれぞれ100人の自衛隊員が配置されました。40年前の沖縄の「復帰」後、最大規模の自衛隊の展開となります。
石垣島では、PAC3は海上自衛隊の輸送艦「くにさき」や航空自衛隊のC130輸送機が運搬し、そのほかの陸自の車両は民間のチャーター船が輸送しました。さらに、民間地に実弾を装填した銃で武装した隊員がPAC3の警備として配備されています。市役所にも10人程度の人員を配置し、「連絡」役にあたらせています。PAC3の配備されない与那国島にも「破片が落下した際の救護に備える」として闘牛場に自衛隊員が配備されました。このほか、沖縄本島へのPAC3の運搬は名古屋港から民間船舶が使用されました。
自衛隊が、民間や自治体を巻き込んで「有事」に備える態勢をつくっていることが分かります。「復帰」40年である今年、自衛隊の意義や有用性を「脅威」を煽ることを通じて示そうとしていると言えます。昨年は東北の震災被災地での「活躍」が喧伝されてきた自衛隊は、沖縄では軍隊としての本質を示しています。
人工衛星の打ち上げ自体は国際法(宇宙条約)でいずれの国家にも認められた権利です。ですので、防衛省はPAC3の配備について、「北朝鮮の人工衛星打ち上げが失敗したときの落下物を撃墜する」としています。しかし、PAC3の有効射程は約20キロメートル程度であり、そもそも秒速4キロメートル以上で飛来するミサイルの迎撃が可能かどうかについても疑義が持たれています。
09年8月に韓国が初めて人工衛星を今回の朝鮮と同じように南に向けて発射しました。韓国のロケットはトラブルのために打ち上げが1カ月ほど遅れていました。ロケット自体は高度300キロメートルまで上昇したものの、人工衛星の軌道への投入は失敗しています。しかし、政府や自衛隊は「韓国の場合は宇宙の平和利用であることは明らかだ」として、今回のような迎撃態勢をとりませんでした。
朝鮮は今回の人工衛星の打ち上げにあたって、外国の政府、マスメディア、科学者に施設や打ち上げ後のロケットの飛行経路を公表しています。さらに、人工衛星のロケットと弾道ミサイルは技術的には同じだから、韓国は良くても朝鮮の人工衛星発射はダメという二重基準は国際社会に新たな不安定要因をもたらす原因となります。
結局、「北朝鮮のミサイル発射実験」をいかにも脅威のように煽り立て、これを利用してこの間も進められてきた沖縄方面への自衛隊の展開を進めようとする日本政府と自衛隊の姿勢が見て取れます。
以上、転載終わり。
沖縄タイムス(4月9日付)にも、2009年の朝鮮の「ミサイル発射」に対応した元内閣官房副長官補の見解が掲載されている。PAC3の展開について「展開の訓練と八重山諸島への配備に向けた地ならし」が目的とのことです。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-09_32253/
要するに、打ち上げられるのが人工衛星でもミサイルでも、軍事的対応としてはPAC3部隊の配備は意味がないと言えます。しかし、すでに修学旅行のキャンセルなど観光への影響が出ているようです。
朝鮮が打ち上げ施設の公開を進めるなかで、今朝あたりのマスコミは「事実上のミサイル」という言い方にシフトしていますが、物事をもっと冷静に見定める必要があるのではないでしょうか。

「くにさき」と同型の「おおすみ」LST4001。昨年9月海自呉基地沖にて。
ときどきその艦型から「空母だ!」という人もいますが、LST=LandingShipTankつまり戦車揚陸艦です。甲板上でヘリの発着・係留はできますが、整備能力はないので「空母」と呼ぶには苦しいかも知れません。固定翼機の発着能力はありません。
Posted by 平和友好祭 at 12:12│Comments(0)
│自衛隊・米軍
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